診療科・部門小児救急の受診の仕方

宮古病院小児科の現状に加え、小児救急のかかり方についてお話しします。

はじめに

まず、「外来」と「救急」の違いについてお話しします。
外来は、すべての症状の診察・診断・検査・治療を行うため、平日開設しており、当院では、初診の方は、平日午前11時までの受付となっております。
次に救急です。救急は、救急を要する緊急性のある疾患、つまり急いで判断、処置を行う必要がある患者さんが受診できるよう開設しております。救急を要する疾患は、いつ発生するかわからず、いわゆる手遅れになることがないように24時間開設しています。逆に言うと、救急を要さない疾患の方は受診されないようにお願いします。

しかし、一般の医療の知識のない方は、救急を要する疾患とは何か、この子はどうなのか、受診するのはどのタイミングがよいのかの判断ができず受診されている方が多いようです。
ここで、宮古病院小児科の現状として、当直できるぎりぎりの人数である5名の小児科医が、救急および病棟・NICU業務、出生時の緊急対応などを毎日交代でたった1人で担当していることをご理解ください。

「小児救急のかかり方」から以下のポイントにしぼって述べます。

  1. 平日時間内外来と救急の違い
  2. 小児の緊急度の見分け方
  3. 小児の重篤な疾患あれこれ
  4. 小児の事故(予防)

 

1.平日時間内外来と救急の違い

当院小児科は、夜間休日の救急外来は1名の医師で回しており、多くの外来および入院患者さんの診療にあたります。当然診療内容にも平日時間内と比べて制限が生じます。従って、救急外来とは緊急性のある患者さんに受診していただきたい場所なのです。ある病院の過去の報告では、当科の救急外来受診者のうち入院を要さなかったいわゆる「軽症」の割合が90%以上というデータが出ております。しかし、一方で少ないながらも重症の方がいらっしゃるのは事実で、かつ小児の場合重症の見分けが困難なこと、また軽症であっても重症への移行が早いことから親御さんの心配の度合いが強くなるのは致し方ないことです。次の項目で救急を要する緊急度の見分け方についてお話しします。

2.小児の緊急度の見分け方

小児科救急外来受診の動機となる症状は、おおよそ以下のものがほとんどです。発熱・嘔吐・腹痛・咳・喘鳴・けいれん(ひきつけ)など。
夜間休日の家庭あるいは救急外来においては、大事なのはこういったいろいろな症状から病気を「診断」することではなく、緊急性を「判断」することです。その点で、大人に比べて小児はとくに体調の変調を体で表現しやすいため、「パッとみた全体の印象」が実は緊急度に非常に関連性が高いといえます。もう少し具体的には、「意識(顔つき、目つき)」、「呼吸状態」「皮膚の色調」の3点における「第一印象」が重要となります。意識がしっかりしているか(顔つき目つきがうつろでないか)、呼吸が苦しそうでないか(早く荒い呼吸でないか、ひゅうひゅうやぜいぜいといった気管支が狭くなった音が聞こえないか)、皮膚の色調が悪くないか(青白かったり、まだらな色でないか)、どれか一つでも異変があれば緊急性が高い可能性があるので、救急受診を勧めます。逆にこの3点でどれも異変がないときには緊急性は低いため、夜間休日であれば平日時間内まで待ってよいこととなります。ただし、この3点の評価は時間毎に繰り返して行うべきで、ある時点で大丈夫でも次の時点で異変があれば救急受診をした方がよいと判断されます。こうした反復の評価により正確な対応が可能となります。この指標は実は私たち医療者でも、小児の重症度の見分け方の最初のステップとして利用しており、大変有用です。
一つだけ例外があります。「第一印象」がよくても、生後3か月未満(2か月まで)の乳児は、免疫系が弱いため発熱だけでも入院管理が必要です。必ず受診されるようお願いします。

文章だけでは、わかりにくいと思いますので、図に示します。

下図に兵庫県の「こどもの救急ガイドライン」を提示します。とても見やすいと思います。
この他にも各県・各市町村から同様のガイドラインがウェブページ上で閲覧できます。
緊急で使用できるようブックマークされることをお勧めします。もちろん当県でも作成・配布しており、ウェブページ上でからも閲覧できます。


これを見て、症状が発熱のみであれば、救急を受診する必要はないということに気がつかれたと思います。
ここで、インフルエンザについてお話しします。インフルエンザは、毎年流行するため宮古島市では重篤化予防のため無料で予防接種を行っております。また、インフルエンザに罹っても8~12時間以内の検査では陽性率が低いため、検査を行いません。現状として、発熱してすぐ受診される患者さんが多いのですが、全身状態(「パッとみた全体の印象」)が良ければ救急を受診する必要はありません。この中に予防接種未接種者が多数おられます。インフルエンザに罹らないため、重篤化しないためには予防が一番です。他の予防接種に関しも同様の目的で行っています。

3.小児の重篤な疾患あれこれ

先に述べたように様々な症状で患者さんは救急外来を受診されます。この中で、とくに重篤な疾患とそれに関連する症状を下記の表に示します。
どの疾患も夜間休日の時間帯であれば翌朝や平日まで待ってはいけないものです。ただし、これらもやはり先ほど述べた3つの項目どれかに異変を生じているはずです。ぜひ冷静に「第一印象」を評価してみましょう。

 

表 小児の重篤な疾患と気をつけなければならない症状
疾 患 名 症  状
髄膜炎、脳炎 発熱、けいれん、嘔吐、意識がもうろうとしている(あるいは意識がない)
急性心筋炎 発熱、呼吸困難、嘔吐、活気がない、顔色がわるい、尿が少ない
腸重積症 腹痛、嘔吐、血便
喘息大発作 喘鳴(ひゅうひゅう、ぜいぜい)、呼吸困難
クループ症候群、急性喉頭蓋炎 咳(犬が遠吠えするような、オットセイのなくような)、喘鳴、呼吸困難
脱水症、低血糖症 嘔吐、活気がない、意識がもうろうとしている、尿が少ない、顔色が悪い

4.小児の事故(予防)

小児の救急を語る上で避けて通れないのが、「不慮の事故」です。なぜなら新生児・乳児を除く19歳以下の小児の死亡原因の第1位だからです。小児の事故で多いのは、転倒・転落・溺水・異物の誤飲・誤嚥などです。いずれも日頃からのちょっとした注意により予防が可能です。中でも異物の誤飲・誤嚥したものによる気道の閉塞(窒息)や中毒など、重大な事態を招く危険があります。乳幼児は何でも口にします。3cm以下の大きさのもの(トイレットペーパーの軸の中に入る程度の大きさ)は乳幼児の手の届くところにおかない配慮が必要です。特に危険なものとしてボタン電池があります。ちなみに最も多いのはタバコの誤飲ですので、喫煙される方は取り扱いに注意をお願いします。どういうものが危険だとか、どう対処するかといった、より具体的な詳細については、いろいろなウェブサイトもご参照ください。
ここで救急車の利用について一つだけお願いがあります。タクシー代わりに利用されているような方を時折見受けます。台数に制限のあるものであり、本当に重症な方の搬送に支障を来す場合があります。緊急性を判断の上、適切にご利用いただきたいと思います。

5.参考リンク先

小児の救急で対応に迷った場合には、
沖縄県小児救急電話相談(午後7時から午後11時:#8000と電話すればかかります。)
に電話してください。

また、沖縄県小児保健協会の下記ページから
『子ども救急ハンドブック』(日本語)
『子どもの救急ガイドブック』(英語版)(スペイン語版)
がダウンロードできます。
そのほか、日本小児科学会が監修している「こどもの救急」のサイトを参考にしてください。

最後に、平成28年3月の記者会見以降皆様のご理解を頂け、夜間急性疾患でない患者様が減少しました。 感謝申し上げます。
これからも皆様が安心して受診いただけるよりよい救急外来を目指して努力して参りたいと存じます。ご協力をよろしくお願いします